MLBのフリーエージェント(FA)や年俸交渉の権利は、選手のキャリアを大きく左右するターニングポイントです。
サービスタイム(Service Time)とクオリファイングオファー(Qualifying Offer)は、選手の権利取得に深く関わる重要な制度です。
この記事では、以下のことがわかります。
- サービスタイムの定義と計算方法
- FA権、年俸調停権との関係
- クオリファイングオファーの内容と仕組み



サービスタイムやクオリファイングオファーって、複雑でよくわからない…



この記事を読めば、制度の仕組みから選手と球団の戦略まで、スッキリ理解できます。
- サービスタイムとは、選手がメジャーリーグに在籍した累積期間のこと
- サービスタイムが6年になるとFA権を、3年になると年俸調停権を獲得できる
- クオリファイングオファーは、FA選手が移籍する際、元の球団にドラフト指名権が与えられる制度
『サービスタイム(Service Time)』とは?
サービスタイムの定義と計算方法
MLBにおける「サービスタイム」とは、選手がメジャーリーグで過ごした累積の在籍期間を示すものです。
具体的には、選手がメジャーリーグのロースターに登録されている日数を計算し、その期間によってフリーエージェント権(FA権)や年俸調停権の取得が決まります。
- 1シーズンのサービスタイム:172日(1年のサービスタイムに相当)
- メジャーリーグの通常シーズン日数:187日
- 選手が1シーズンのうち172日以上在籍していれば、1年分のサービスタイムが与えられる。
例えば、ある選手がメジャーリーグで3シーズン合計516日(172日×3年)過ごせば、3年分のサービスタイムを取得したことになります。
サービスタイムとFA権、年俸調停権の関係
- FA権(フリーエージェント権):
- MLB選手は6年分のサービスタイムを積み重ねることで、完全なFA権を取得します。
- FA権を取得すると、他球団と自由に交渉が可能になり、年俸交渉の自由度が大幅に高まります。
- 年俸調停権(アービトレーション権):
- サービスタイムが3年に達した選手は年俸調停の権利を得ます。この権利を持つと、球団と年俸に関して調停機関を通じた交渉が可能になります。
- また、サービスタイムが2年以上3年未満でも、上位22%に位置する選手は特別に年俸調停権(スーパー2資格)を得ることができます。これにより、若手有望選手の年俸が大きく増加する可能性が高まります。
サービスタイムを巡る球団と選手の駆け引き
サービスタイムは球団にとって戦略的に管理されることが多く、新人選手をメジャーに昇格させる時期がサービスタイムの影響で調整されるケースもあります。
例えば、シーズンの開幕直後に数週間だけマイナーリーグに置くことで、そのシーズンのサービスタイムを1年に達さないよう調整し、選手のFA権取得を1年遅らせることが可能です。
これは「サービスタイム操作」としてしばしば議論される点です。
メジャーリーグと日本プロ野球のフリーエージェント制度(FA制度)について細かく解説しています。
両リーグのFA制度には、違いがありこの記事を読めば納得いく内容をなっています。
『クオリファイングオファー(Qualifying Offer)』制度とは?
クオリファイングオファー制度は、MLBにおいてFA市場で選手が他球団に移籍する際、元所属球団に対して一定の補償を発生させる目的で導入された制度です。
この制度により、FA移籍による戦力流出がある程度補填され、球団間のバランスが保たれることを目指しています。
クオリファイングオファーの内容と仕組み
- オファーの内容:
- クオリファイングオファーは1年契約のオファーで、その年のMLBトップ125選手の年俸平均額を基準とした金額になります。
2023年現在、このオファー額は約2000万ドル(30億円)です。 ※1ドル:150円換算
- クオリファイングオファーは1年契約のオファーで、その年のMLBトップ125選手の年俸平均額を基準とした金額になります。
- オファーの受諾・拒否:
- 受諾:選手がクオリファイングオファーを受け入れると、1年契約が成立し、翌シーズンも元所属球団に残留します。
- 拒否:選手がオファーを拒否して他球団と契約する場合、元球団には補償としてドラフト指名権が与えられます。
- 対象選手:
- クオリファイングオファーを受けるには、元の球団でシーズン全期間を過ごした選手である必要があります(トレードで加入した選手は対象外)。また、クオリファイングオファーを受けたことがある選手は再度対象になることはありません。
補償の仕組み
クオリファイングオファーを拒否して他球団に移籍した場合、新しい契約球団には以下のような罰則や補償が適用されます。
- 元球団の補償:
元球団は失った選手に対する補償としてドラフト指名権を受け取ります。 - 新しい契約球団の罰則:
新たに契約した球団はドラフト指名順位が低下したり、国際選手契約枠が減少したりするなどの罰則が課されます。
クオリファイングオファーの戦略的な使い方
クオリファイングオファー制度は、元所属球団がトップ選手を手放す際に一定の補償を得られるようにする一方、他球団にとっては指名権などのペナルティがあるため、選手の移籍が慎重になる要因となります。この制度により、FA市場での交渉や移籍の戦略が複雑になり、球団や選手の戦略が求められる場面も増えます。
よくある質問(FAQ)
- サービスタイムが6年に満たない場合、FA権は取得できないのですか?
-
はい、その通りです。メジャーリーグ(MLB)の選手は、サービスタイムが6年(172日×6年)に達することで初めてフリーエージェント(FA)の権利を得られます。6年に満たない場合はFA権を取得できず、現在の所属球団との契約が続きます。
- クオリファイングオファーを拒否した場合、必ずドラフト指名権が元の球団に与えられるのですか?
-
はい、原則として、クオリファイングオファーを拒否して他球団と契約した場合、元の球団は補償としてドラフト指名権を得ます。ただし、補償の順位は元の球団の収入規模や、新たに契約した球団の状況によって変動します。
- サービスタイムの操作は、選手にとって不利な状況しかもたらさないのでしょうか?
-
必ずしもそうとは限りません。サービスタイムの操作は、確かにFA権の取得を遅らせる可能性がありますが、一方で、若手選手に十分な育成期間を与え、メジャーで活躍できる準備を整えるという側面もあります。また、球団との良好な関係を築き、長期的な契約につながる可能性もあります。
- クオリファイングオファーの金額はどのように決まるのですか?
-
クオリファイングオファーの金額は、MLBの上位125選手の年俸平均額を基準に決定されます。この金額は毎年変動し、その年のFA市場の動向に影響を与えます。2023年時点では、約2000万ドル(約30億円)でした。
まとめ
MLBのサービスタイムとクオリファイングオファー制度は、選手のFA権取得や球団の戦略に大きく影響します。両制度を理解することで、MLBをより深く楽しめるようになります。
- サービスタイムは、選手のFA権や年俸調停権に影響する
- クオリファイングオファーは、FA選手の移籍に伴う球団間の補償制度
- 球団はサービスタイムを管理し、FA権取得時期を調整することがある
- 戦略的な駆け引きが、MLBのFA市場をより魅力的にする
項目 | サービスタイム (Service Time) | クオリファイングオファー(Qualifying Offer) |
---|---|---|
定義 | 選手がメジャーリーグで過ごした 累積在籍日数 | FA移籍時に元所属球団が提示できる1年契約オファー |
計算方法 | 1シーズンのうち172日を在籍すると1年分のサービスタイムとしてカウント | トップ125選手の年俸平均額(約2000万ドル:30億円)で提示 ※1ドル:150円換算 |
FA権取得条件 | サービスタイムが6年に達すると FA権を取得 | FA宣言時に元球団が提示、選手が拒否すれば他球団との契約が可能 |
年俸調停権取得条件 | サービスタイム3年以上(スーパー2は2年以上3年未満で上位22%) | 年俸調停権には影響しない |
オファーの受諾・拒否 | サービスタイムにより FA権が自動的に付与される | 受諾すると1年契約成立、拒否するとFAとして他球団と交渉可能 |
補償 | サービスタイムに基づくFA権や年俸調停権を球団が管理して選手を長く保持 | 拒否した場合、 元球団はドラフト指名権の補償を得られる |
球団の戦略的利用方法 | サービスタイム操作によりFA取得時期を遅らせることで選手を安価に長く保有する | FA選手を引き留めたり、 指名権補償を得るための手段 |
対象外の選手 | マイナーリーグ在籍日数は カウントされない | シーズン途中にトレードで加入した選手、既にQOを受けたことがある選手 |
影響 | 選手のFA取得や年俸調停権の行使タイミングに大きな影響 | 他球団との交渉時にドラフト指名権ペナルティがあり、移籍市場に影響 |
この記事を参考に、MLBのサービスタイムとクオリファイングオファー制度を理解し、さらなる野球観戦を楽しみましょう。
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